みなさんはトヨタの「最強エンジン」というと、何を思い浮かべるでしょうか?
かつて、スープラやアリストに搭載され、その拡張性と耐久性、優れたトルクとパワー特性を持ち、今もなお国内外で高い人気を誇る「2JZ」を挙げる方も多いと思います。
今回はそんな2JZと歴史や、人気の理由などに迫ります。
トヨタ2JZエンジンとは
トヨタ2JZエンジンは1990年代を中心に2000年代中盤ごろまで製造されていました。
2JZエンジンには大きく3種類のバリエーションがあり、NAエンジンのGE、ツインターボのGTE、ハイメカツインカム搭載のFSEというものが存在します。
中でも、ツインターボ仕様の2JZ-GTEは「トヨタ史上最高のエンジン」とも称され非常に人気があります。
この2JZ-GTEエンジンは、直列6気筒のDOHCエンジンで、排気量は2,997ccです。吸気方式はインタークーラー付きツインターボとなっており、最高出力は280PS/5,600rpm、最大トルクは44kgm/3600rpmです。
この280PSという数値は、当時業界団体らによって定められた馬力自主規制値の上限であり、チューニングを施すことによって1,000馬力を超えるポテンシャルを持っています。
1997年には、2JZ-GTEにトヨタの可変バルブタイミングリフト機構であるVVT-iが採用され、最大トルクが44kgm/3600rpmから46kgm/3600rpmに引き上げられました。
このエンジンは、スープラやアリストに搭載されており、アリストのモデルチェンジを機に、スープラもVVT-iを採用した2JZ-GTEに変わりました。
この2JZ-GTEエンジンは現在生産終了となっていますが、その人気は依然として高く、国内外を問わず多くの愛好者に支持されています。
2JZが今でも世界で支持される理由とは?
純正のスペックも十分魅力的ですが、多くの車ファンが2JZ-GTEエンジンに魅了される理由は、チューニングでのさらなるパワーアップやカスタマイズが可能な拡張性と、そのハイパワーに耐えうる耐久性にあります。
2JZ-GTEのエンジンブロックは熱に強い鋳鉄製を採用し、ハイパワーの負荷にも耐えられる耐久性を持っています。
この強靭なブロックのおかげで、1000馬力級のチューニングにも対応可能。
2JZはチューニングベースのエンジンとしての拡張性が高く、各種パーツやキットも豊富に存在します。
そのため、アフターパーツが多く、チューニングしやすい環境が整っています。
2JZ-GTEは、日産のスカイラインGT-RのRB26DETTエンジンと比較されることもありますが、低速トルクは2JZ-GTEの方が優れています。
その結果、400m加速タイムを競うゼロヨンやドリフトの競技車両などでも重宝されました。
海外でも2JZ-GTEは人気が高く、もともと北米などでは大排気量エンジンは主にV8エンジンであり、直6エンジンでターボを搭載した車は珍しいものでした。
そのため、2JZ-GTEを搭載したスープラは北米での販売も盛況。
さらに、タービン交換やECUチューニングで手軽に大馬力にできる点、そして豊富な改造キットが存在するため、海外でも高い人気を誇っています。
現在、現存する個体数も少なくなってきており、日本の中古車市場では2JZ-GTEを搭載したスープラはプレミア価格で取引されていて、流通台数も少なくなってきています。
2JZの歴史
JZエンジンは、ヤマハ原動機とトヨタが共同開発した2,000ccの直列6気筒エンジンで、M型エンジンの後継です。
M型エンジンは1965年から1993年まで製造され、2代目クラウンなどに搭載されていました。
トヨタとヤマハの共同開発の始まりは、1964年の夏にトヨタ2000GTの開発であり、その後、トヨタの高性能エンジンの開発ではヤマハとの共同が通例となっていました。
1980年代後半、M型エンジンの限界が感じられるようになり、新世代のJZエンジンの開発が始まりました。
この時期、他のメーカーがV6にシフトしていく中、トヨタは直列6気筒エンジンにこだわり、再びヤマハと手を組んでJZエンジンを開発しました。
すると最初のJZエンジンとして1JZエンジンが登場。
排気量2,500ccの直列6気筒DOHCエンジンとして、GE、GTE、FSEの3種類がラインナップされました。
このエンジンは6代目マークIIや3代目スープラ、8代目クラウンなどに搭載され、高性能モデルとして高い評価を得ていたのです。
そして、翌年には3,000ccの2JZ-GEエンジンがデビューし、クラウンやスープラ、マークII、ソアラなどに搭載されました。
同時期に2JZ-GTEを搭載したアリストも登場しました。
また、1993年にフルモデルチェンジした4代目スープラにもこのエンジンが搭載され、トヨタのフラッグシップスポーツモデルとして注目され、国内外問わず人気車種に。
しかし、2002年の排ガス規制の影響でスープラは生産停止となり、アリストも2005年に生産終了。
その他のJZエンジンを搭載した車種も2007年までに生産が終了しました。
そして、トヨタの直列6気筒エンジンの歴史は終わり、後継としてV6のGRエンジンが開発されることに。
2019年に復活したスープラはBMW製の直列6気筒エンジンを搭載しており、トヨタのJZエンジンはもはや生産されていませんが、その魅力は衰えず、チューニングベースや競技車両として現在も多くの愛好者に支持されています。
特に2JZ-GTEエンジンは、国内外のドリフト競技などで高評価を受けており、その価値は高まるばかりです。
今後、このような傑作と呼ばれるエンジンは少なくなるでしょうから、現在2JZを搭載している車を持つ人は、その価値を大切にしてほしいと思います。